台所が政治を変える2-議会改革の時代を生きる議員を!

――市議会議員選挙を前にして――

地域市民の現場の声が最も重要なこと

私も長年市議会議員を勤めてきました。その経験から議員活動の質はいかに地域や自治体の情報をキャッチするかによって決まると思ってきました。地域や市民あるいは団体などの「現場の情報」こそが重要なのです。ところが、そうした情報が往々にして「口利き」のためにだけ使われているという点に議会の問題があるのではないでしょうか。

「口利き」はいわば市民と行政の間に立ってさまざまな課題解決を行うことですが、それ自体、地域や市民の抱えている矛盾を解きほぐすと考えれば、だめだとばかり言いきれません。しかし、それが時として特定の人、団体、企業のエゴを助長したり、議員による「利益誘導」にもなりかねません。あるいは、それを成功させるには行政=首長との関係を良好にしておくことが不可欠と考える議員は首長の「与党」と化してしまいます。「与党化」すれば、行政に対する「厳しい目」を失ってしまいます。

改革が厳しく問われる今こそ議会の出番

かつては右肩上がりの時代でしたから、増大する財源をどう配分するかが、地方政治家の腕であると思われてきました。しかし、そんな時代は終わってしまい、どこの自治体でも行財政改革が厳しく問われる時代になってしまいました。将来の地域社会のために今何を優先すべきか、何かを削ってもこれだけはやらなければといった「政策選択」が問われる時代になりました。

本来こうした時こそ議会の出番なのです。なによりも地域の人たちの感じていること、考えていることをよく知っているのは議員たちだからです。もちろん、それぞれの地区が抱えている問題を巡って、議員間での意見対立は当然あるでしょうが、そうしたことも含め、議論し、調整して自治体の方向性を決めていくことこそ議員の、そして議会の役割です。地域エゴともいえる主張を続けて対立し、双方が政策実行を迫ることで終われば、自治体改革の時期を逸し、結局は重大な問題の解決を「先送り」することになりかねません。

議会の閉じ籠りを打開することが課題

全国的に「議会改革」が急速に進んでいます。このままでは議会の存在価値がなくなってしまうのではという危機感の表れです。もともと議会は市民とともにあり、行政の目線を市民の方へ向けさせ、行政の体質を変えさせていく役目であったはずです。しかし、現実は議会対市民・行政という構図ができあがり、議会だけが「閉じ籠り」の状態にあるといえます。この事態を打開するため、議会基本条例等の制定・運用を通して議会を変えていくことが今求められています。

著者紹介・西寺雅也氏

名古屋学院大学経済学部総合政策学科教授
山梨学院大大学院非常勤講師
前多治見市長

本年3月まで、山梨学院大学教授として山梨を拠点に、北杜市内にも市民講座の講師として度々通われ、この地への理解も深い。