地方自治はおもしろい4-市民の感覚が地方自治の鍵

国や地方の政治における民主主義について、直接民主主義と間接民主主義といわれる二つがあります。私たち市民の政治への関わり方、「参加」をどのように実現するかを示すものです。自治体政治は私たちが選挙で選んだ二つの「代表」によって構成される機関によって、日常的には行われています。議会と長―行政がそれです。しかし、法律でも示されているように、自治体とのかかわり方はただ単に選挙の投票で終わりということではなく、直接私たちが行動し、参加するしくみが保障されています。市民の権利としてさまざまな手段を使うことができるのです。自治体政治には代表を選び、その代表に「信託」するという間接民主主義と直接私たちが参加する直接民主主義とが組み込まれた制度になっています。

私たちは選挙で選んだ「代表」に白紙委任をしたのではなく、その「代表」が私たちの意思に反したことを行えば、異議申立てすることもできれば、「代表」を取り換えることも可能です。市民側からいえば、「信託」した代表たちの行動や政治的なスタンスを厳しく監視する。それによって、「代表」は「代表」足り得ているといえます。

市民の政治的な活動があまりなく、議会や行政だけで政治が回っているといった環境にあれば、議員も長、職員は楽なもので、いわば「内輪」の議論で適当な議論で済まし、怠惰であっても、非難されることもありません。そこには緊張感は生まれません。しかし、市民の活動が盛んで、さまざまな問題が提起され、争点化している自治体ではそうはいきません。当然、情報公開や参加のしくみ、そして、説明責任が常に問われることとなり、政治は活性化します。自治体政治にかかわる人たちの間の関係も変わらざるを得ません。

私は経験から、「自治体政治をよくするのも、悪くするのも市民の問題である」ということを実感してきました。鋭い批判や行政のレベルを上回るような専門的な知見を突きつけられることによって、「代表」たちも職員も覚醒すると確信しています。市民と議論することをしないで閉じこもる議会や行政を変えていくことのできるのは、市民の力以外にはありません。これまでの「おまかせ民主主義」ではもはや地域社会はよくなっていきません。逆に「代表」たちは特権的な立場にいるのではなく、「市民の感覚」を失わない政治家で居続けなければならないということです。

議会や行政の透明性や公正性をどのように確保するかについても、市民の監視以外にはそれは実現しませんし、市民が声をあげなければ、容易に自治体は変わりません。ましてや、地域全体が公共事業に依存しているといわれるような環境におかれた自治体にとってはなおさらのことです。

 

著者紹介:西寺雅也氏

名古屋学院大学経済学部総合政策学科教授・山梨学院大大学院非常勤講師・前多治見市長。

平成24年3月まで、山梨学院大学教授として山梨を拠点に、市内にも市民講座の講師として度々通われ、この地への理解も深い。