地域社会がこれからどうなるのかを考えておくことは、とても大切なことだと思います。それは今後益々人口が減少したり、高齢化が進んでいくことが確実だからです。私たちの生活は国や地方の政府と私たちというつながりの他に、その間にたくさんの団体や人のつながりがあって成り立っています。その団体や活動が高齢化や人口減少によって、力を失ってきているのではと感じ始めている人も多いのではないかと思います。
たとえば、町内会などの自治組織をみると、これまでかなり強いつながりがあって、いろいろな活動を行ってきたところでも、だんだん活力を失っている、担い手がいない(代わる人がいない)といったことが起き始めています。
高齢化だけではなく、先進国で起きている現象といわれていますが、個人がバラバラな状態におかれ、孤立しつつあるという事実が日本の社会の中でも起こっています。3.11以後、「きずな」という言葉が事あるごとに使われましたが、それは「きずな」が失われている証拠でもあります。
これからの時代こそ互いに支え合うしくみが必要になるというときに、こうしたことが起きているのです。しかし、「お先真っ暗」というわけではありません。阪神淡路の大震災が起きたとき、大勢のボランティアが救援活動に参加しましたが、それ以前から学生たちがいろんな災害の支援に出かけていたといわれています。3.11の時もそうでした。この十五年ほどの間に誰もが当り前のようにボランティアとして活動するようになりました。専門的なノウハウを持つNPOなどの団体も、すぐさま現場に駆けつけています。
地域の中でも役所ではできないことを行う、役所の手の届かない「隙間」を埋める活動が起き、団体もたくさんできてきています。もちろん、まだまだ充分とはいえませんが、確実に増えていますし、レベルも上がってきています。これから一層新しい活動が生まれてくるでしょう。そんな中、定年退職して元気な人たちが積極的に関わってもらえれば、活動は大きな広がりを持つのではないかと考えています(特に男性が地域社会や市民活動に溶け込めないケースが多い)。
最近、私のまちで起きていることですが、若者たちが自分たちの住む地域に強い関心を示し始めています。おおげさな活動というのではなく、「静かに」活動し、インターネットで情報を流し、互いにそれを共有する、そんな感じの活動ですが、いくつかのグループがまちづくりを今までにない形で行おうと動き始めています。つい最近までなかったことです。他の研究者も学生の指向が「地域」に向かっているといっていますので、全国的な広がりがあるのではないかと思います。
これまでとは違うさまざまなつながりを幾重にも編んでいくこと、それがこれからの地域社会や人々の生活を支えていくことになるでしょう。小淵沢ではどうでしょうか。
〈著者紹介〉
西寺雅也氏
名古屋学院大学経済学部総合政策学科教授 山梨学院大大学院非常勤講師・前多治見市長
平成24年3月まで、山梨学院大学教授として山梨を拠点に、市内にも市民講座の講師として度々通われ、この地への理解も深い。