地方自治はおもしろい2-地方分権のはなし

2000年4月1日は地方自治にとって画期的な日でした。地方自治法の大改正をはじめとする地方分権一括法が施行され、明治以来続いてきた国と地方の関係が「上下主従」から「対等協力」の関係に変わった日だからです。日本は戦後の民主化を経ても、とても強い中央集権の国が変わったのです。2000年当時、「自分たちの地域のことは自分たちで決める」ことができるようになったのだと私を含め多くの人たちが語っていました。しかし、役所や役場の職員たちの多くは「地方分権改革が行われても、何も変わらない」と思っていたはずです。

時間が経つにつれて地方分権で自治体は「変わる、変わった」と考えていた自治体の職員と「変わらない」と思っていた自治体の職員では大きな差が出てきてしまうことになります。分権改革は一方で自治体の自立を促し、仕事のやり方も変わり、権限も次第に増えてきました。そして、国や県をあてにするのではなく「自力で自治体を経営する」できるかどうかで、自治体間の大きな格差を生み出していきました。

自分たちで政策を開発し、行政を改革していく自治体が現れる一方で、職員の能力を高める努力を怠たり、地方分権の意味を理解していなかった自治体は「だれも助けてくれない」ことで立ち往生となってしまいました。

「自分たちの地域のことは自分たちで決める」ことを実行していこうとすれば、自治体改革を進め、地域の課題に正面から向き合わなければなりません。そのためには政策をつくるとき市民が何を考え、何を必要としているかを的確に知る必要があります。それをどう汲み取るのかその方法を見つけ出すことが必要になってきます。それとともに、市民、議員、長、職員の間で「合意」を図るためには互いの間での議論が本当に行われているかが問われます。

それは「地域の政治を変える」ことを意味します。これまでのように行政内部だけで決定し、議会に諮ってもきちんとした議論も行われずに政策がつくられていく、そういう過去の政治から抜け出ているのかどうかを市民は監視している必要があります。

地域の課題について行政だけではなく、市民が議論に参加しようとすれば、情報を共有し、同じレベルに立って議論がされなければなりません。「情報のないところに議論なし」といわれるのですが、行政が収集した情報を整理し、分かりやすく市民に知らせているのかどうか、市民が知りたい情報はすぐに取り出せるのか、市立図書館の中に市の発行した調査や統計、あるいは計画書などが系統的に揃っているか、公の会議がどこまで公開されているかも含め、情報の取扱いはとても重要で、その状況を見ただけでその自治体の質が分かるといっても過言ではありません。

まとめれば、「市民が市の政治に参加する仕組みが整っているか」、また、「その前提として情報共有を目指した取組みがされているか」の二つがとても大切だということです。

 

 

著者紹介:  西寺雅也氏

名古屋学院大学経済学部総合政策学科教授・山梨学院大大学院非常勤講師・前多治見市長。

平成24年3月まで、山梨学院大学教授として山梨を拠点に、北杜市内にも市民講座の講師として度々通われ、この地への理解も深い。